土曜日の夜、久しぶりにS道場にお邪魔して小学生達と稽古をさせて頂きました。低学年の子も上級生に負けず劣らず気合が入っており、一瞬たりとも気が抜けません。そんな小学生達を見ていると遠い昔の記憶が思い出されます。
私の実家は私鉄の小さな駅から歩いて15分程度にある郊外の住宅地にありました。
真夏の昼下がり、当時小学校低学年だった私は母と3歳上の姉と一緒にお出かけし、その帰りに母が駅のお店でアイスクリームを買ってくれました。普段、滅多に買い食いをさせなかった母が珍しくアイスクリームを買ってくれたことに大喜びして、さあ食べようとしたときに姉が「家に帰って食べる」と言いだしたのです。
私はすぐにでも食べたかったのですが、母も姉の意見に同調したので、渋々従わざるを得ません。家に着くまでとても長く感じられ、暑さにバテている私に母は「我慢は大事」と言い聞かせながら3人で歩き続けました。
やっとの思いで家に辿り着き、大急ぎでバー状アイスクリームの銀紙を剥がすとそこに現れたのは直方体のバニラではなく、液状化してドロドロに溶けだした無残な姿。それを見た瞬間、あまりのショックに泣きながら姉と母に「なんで家に帰って食べるって言ったの!」「我慢したのに何でこんな目にあうの!」などと大声でわめき散らしたことを覚えています。
「天国(買ってくれた喜び)」から「地獄(言いつけに従って我慢した結果)」に突き落とされた絶望感が心に刻まれたのでしょう。何十年も前のことなのに、だらしなく溶けたアイスの記憶は今も鮮明によみがえってきます。